1万本に1本の確率でしか見ることのできない「黒柿」。
皆さんは「黒柿」の存在をご存知ですか?
樹齢150年以上の古木でしか見つからないため「神秘の銘木」と言われています。
見た目は普通の古木で、伐採してみないとそれが黒柿とはわかりません。
かぐや姫伝説の様ですが、見た目に光っているわけではありませんから、偶然伐採されて見つかるというケースが殆んどです。
実は先日、偶然置き場で伐採した柿の木が「黒柿」だったため、社内では今週のトピック(話題)でした。
仕事の合間に、代わる代わるに置場へGO! → 「おぉ!」「初めて見ました!」「知れば知るほど奥が深い!」感想は様々。
インスタグラムにアップしたとたん「是非、見たい!」とお電話も頂きました。(見て頂きありがとうございます!)以前にも黒柿が出たことがありましたが、今回は何となく皆の注目度が高かった気がします。(笑)
その黒さは、まるで墨汁がしみ込んだような、何とも言えない紋様を生み出していて、美しさと不思議さに目を奪われてしまいました。自然ってミラクル。
この黒い不思議な紋様は、いったいどうやってできるのでしょうか?
一説には、柿渋の元「タンニン」が地中から取り込んだ物質と化学変化を起こして生まれたといわれています。100年以上を生き抜く中で、自然災害や人災で傷ついた木自身を守るため、このような黒い紋様を生み出したという説もあります。
自身の成長のための微生物を呼ぶために、根から栄養豊富な液を出し、根に入り込んだ微生物が増殖するために取り込んだ元素と黒柿自身の成長のために取り込んだ元素で黒くなるという研究結果も発表されているようです。(引用「稀少銘木「黒柿」の物理化学的特徴と生体鉱物化作用」)いずれにしても「奇跡の産物」であることは間違いないようですね。
現代でも、茶道具や花台、火鉢、床柱、箪笥などの素材に使われる貴重な黒柿ですが、実はこのまま放置すると、残念ながら製品に仕上げることは出来ません。「約5年程かけて、一定の水分量まで乾燥させてから加工する」という大切な工程が必要です。本来の木の部分と黒い部分の収縮率が違っているため、通常の木の乾燥方法とは全く違います。状態によっても異なりますが、経過を見ながら2年程水中乾燥することもあり、製品として生まれる前に既に特別な技術を必要とします。
黒柿は古来から珍重され、重硬ですが加工するには割れやすいという特性があります。磨くごとに滑らかで、美しい艶が出るので、細かくなったものはアクセサリーとして使われることも多くあります。製品になるまでに多くの困難な過程を辿り、それ故に奇跡の銘木は更に希少価値が高くなるようですね。
歴史的にも、正倉院の宝物の中には、黒柿の両面厨子・供物台など様々な工芸品が含まれています。今で言う皇族方の為に作られた物や、江戸時代には大名達が黒柿の茶道具のコレクターであったことなどから、古来からその希少性の高さで、高価な銘木として愛されてきたことが分かります。
今回見つかった黒柿は、現在、水中乾燥のため一休みしています。休息の後どう変化するのか、何だか楽しみですね。